【ターンアラウンドマネジャー】

弊社では全国に多くのクライアントがいます。

個人オーナーの旅館、小規模の独立系ホテル、大規模の観光旅館やホテル、地元に根差したホテル、フルサービスの大型ホテル、大手のチェーンホテル、など等・・・・・

常に求められていることは収益改善と人材育成ですが、コロナ禍においては売上改善を見込むことがかなり困難な地域もあります。

さらには宴会や飲食売上が全体売上の50%以上の構成比を占めているホテルなどは、宿泊稼働をいくらアップしても黒字にすることは困難です。

一方ではクライアントの中には雇用調整助成金や時間短縮協力金などをうまく活用し、売上が極端に減少しても赤字にならない経営をしているホテルや旅館も見られます。まさにおかれている状況や環境または規模などで様々な違いが出ています。同じ処方箋などは存在しません。

コロナ禍のいま弊社が取組んでいることは、個々の環境や規模またはそこにいるスタッフのスキルに合わせて、業務の効率化や意識改革、組織や権限の見直し、システム化の促進、メニューの見直し、全ての経費や契約内容の見直し、原価設定の検証、新たな商品造成、個々の生産性アップ、マーケティング手法の検証、オペレーションの見直し、人材育成のための教育研修などを実施しています。いわゆるビジネスの再構築です。

少人数オペレーションを実現し、損益分岐点を押し下げ、従業員への負担軽減とともに顧客満足度改善のための取組みを細かなことも含めて総合的に取組んでいます。

そういったことを現場のスタッフとともに取組むには、自らがターンアラウンドマネジャーという認識を持ち、責任をもって現地に寄り添うことが重要と考えています。

いままでは月に何度か訪問し、課題を共有しながら解決策を具体的に提示していましたが、これからは現状の手法は継続しながらも、弊社で育成した人材を現地に派遣(出向)し、24時間現場に寄り添いながら改善を共に進めていくようなスタイルも考えています。いわゆるターンアラウンドマネジャーの派遣です。

組織の中からと外からで改善に取組むことで、改善のスピードは一気に速くなります。弊社では過去にはこのスタイルで収益改善を短期間で実現した実績もあり、再度このスタイルを導入することとしました。要するにターンアラウンドマネジャーになりえる人材確保が重要ということを再認識しています。

【運営面からみた収益改善(バリューアップ)メソッド】③

売上が70%程度であっても経営が成り立つ収支構造を目指す

業務効率化・組織改革・事業構造の見直しなどの改革に積極的に取り組んだホテルは損益分岐点が改善され、2021年以降の売上が、コロナ前の対2019年で70%程度(売上30%減)であってもGOPレベルでは同等の利益を確保することをめざすべきである。

勿論、地域差や施設規模や業態での差があることは承知している。

弊社のクライアントのフルサービスホテルの中には2020年度の売上が対2019年で30%程度(売上△70%減)のホテルが複数存在することも事実である。中には人件費総額が売上額とほぼ同等になり人件費率100%(雇用調整助成金を除く)というホテルも存在する。2019年までは営業黒字だったにもかかわらず、一気に奈落の底に突き落とされてしまった。

しかしこのホテルではいち早く、組織や役割または事業構造自体の転換に積極的に取組んだことで、損益分岐点が大きく改善され、売上規模が対2019年で60~70%程度でも赤字にならないことが見込まれている。そして2022年には更に黒字化が見込まれ、2020年の大きなマイナスを徐々に挽回するべく取り組んでいる。

リミテッドサービス(宿泊主体型)とフルサービス(総合型)ホテルの人件費の考え方

経費構造の見直しの場合、特に人件費の効果的な削減(適正化)は重要なポイントだが、需要回復期を見越した体制も視野に入れたい。

宿泊主体型ホテルはそもそも少人数のスタッフで運営しているため、人件費の削減にもおのずと限界がある。

一方、フルサービスホテルに関しては宴会スタッフやレストランスタッフまたは調理部門や管理部門などの業務を見直すことで、「総労働時間を削減」し結果として人件費のコントロールすることは十分に可能である。

とはいえ宴会調理部門などは残念ながら現時点では宴会需要が消滅したことにより、雇用調整助成金の対象として、集中的に休暇を取得させているホテルも多く、調理スタッフの技術とモチベーションの低下が危惧されるところである。

例外的ではあるが人手が不足している他の業種に期間限定で出向させるという、新たな雇用形態も出現してきた。

更にはニューノーマルに適合した新たな商品開発に取り組んだホテル企業などは、2022年以降に需要が回復した段階では、その新たな商品が売上の底上げ効果となり、利益に貢献するはずである。

反転攻勢の準備を怠らない!

2020年3月以降防戦いっぽうでしたが、ようやくワクチンという光が見えてきました。

まだまだ予断は許しませんが、すでに65才以上のマーケットは動き出しています。

多くのホテルや旅館では人材育成や運営手法の最終見直しなどをしていることと思いますが、

第二四半期である7~9月が体質改善(収益力改善)のためのラストチャンスです。

ここで変われない組織は下期以降の需要回復期に乗り遅れ、

コロナ禍の負け分を取り返すことはできません。

一方では全国的に見れば雇用調整助成金や時間短縮協力金などが終了するとともに

経営が行き詰まるホテルや旅館も出てくるはずです。

それと同時に金融機関やファンドの動きも活発になることでしょう。

弊社は事業再生や収益改善などを得意分野としている会社でもあり、

各地の金融機関等と連携を強め、下期以降の取組みの準備を進めています。

【運営面からみた収益改善(バリューアップ)メソッド】②

2021年以降は、「優勝劣敗」

優勝劣敗とは、「生存競争では境遇に適したものが生き残り、境遇に順応できない者が滅びる」という意味、まさに2021~2022年は宿泊業界にとっては優勝劣敗が明らかになる年である。

2013~2019年まではインバウンドの増加をうけ、新規開業ラッシュにより客室数の供給が急増したが、コロナ感染症の影響で一気に需要が消失し、全国ほぼすべての宿泊施設が危機的経営状況に陥ってしまった。

雇用調整助成金やGOTOキャンペーンなど各種助成制度や支援制度はあるものの、それらが終了後の反動が大きく影響し、その段階で金融機関の支援を得られず、資金ショートしてしまえば、まさに経営破綻という厳しい現実に直面することになる。

いま必要なことは需要回復期における利益率の改善のための準備をする、ということである。

じっと我慢して耐えているということでは、感染症収束後も間違いなく負け組ということになってしまう。

一方では雇用の確保ということも重要になってくる。

たしかに現状は想像を絶する厳しい経営環境(財務状況)ではあるが、需要回復期における人手不足はいまから予想できることである。

2019年までは人手不足が業界の大きな課題でもあったことを考えると、人員整理やリストラなども慎重に行う必要がある。

しかし資金繰りで待ったなしの状況に追い込まれているホテルでは、いまを乗り越えるために人員整理もやむなしだが、同時に施設規模の縮小や不採算部門からの撤退、または営業スタイル自体の変更なども考えるべきである。

いまは雇用調整助成金等を最大限に活用し、ギリギリまで雇用を守るという基本姿勢をもっていただきたい。

【運営面からみた収益改善(バリューアップ)メソッド】①

新型コロナウイルス感染症で大きなダメージを受けた宿泊業界では2021年以降、経営破綻・譲渡・リブランド・運営会社変更など続出することが予想される。

2019年までは運営面における経営悪化の原因や対応策などは、事業デューデリジェンス(事業評価および分析)などを実施することで、ある程度は改善のための方向性などを示すことができた。

しかしいま我々が直面している状況は、内的要因や経済不況などによる落ち込みではなく、世界規模の感染症という未知の領域であり、その打開策に関しては、今までのやり方だけでは通用しない。

いま我々に求められていることはホテルの役割や価値観が変わったということを認識し、2021年はもとより2022年以降を見据えた事業構造の転換、収益構造の変革、生産性の向上、などホテル事業の在り方そのものの改革が必要とされている。

ここではコロナウイルス感染症で受けたダメージから脱却し、運営面から見た経営の健全化、更にはバリューアップするにはどのような方法や考え方があるのか、等の考察を行うこととする。

「運営面から見た現状と今後の方向性」

ホテル業界再編成時代&今後の展望

2020~2021は新型コロナウイルス感染症に翻弄され、宿泊業界では生き残りをかけ様々な対応を迫られているが、資金繰りの悪化から事業継続を断念するホテルも多数でてくるはずである。

その結果として運営会社の変更や事業譲渡または廃業・倒産など様々な形で業界の再編成がおこなわれる。それは大手のホテル会社においても予断を許さない状況である。

またひとくくりにホテルと言ってもカテゴリーによって、そのダメージの大きさは違ってくる。

フルサービスホテルでは宴会需要が消滅したことを受け、ダメージの大きさは宿泊主体型ホテルとは比較できないくらいの規模となっている。

また有名観光地の小型高品質な旅館とインバウンドの構成比率が多い都市部のホテルでも大きく違ってくる。

このような状況下でホテル運営を継続していくために重要なことは、資金繰りはもとより、収支構造の見直し(収益力のアップ)ということになる。

言い換えれば損益分岐点をいかにして下げることができるか、ということである。

運営手法の見直しや組織の見直しまたは業態変更などで損益分岐点を下げることができれば、2021年下期以降にワクチン接種が普及し、観光需要が徐々に回復してくれば、コロナ禍で受けたダメージを補うことも可能なはずである。

そのためにはハードウエア(設備や機能)、ソフトウエア(組織、仕組、役割、手法)、ヒューマンウエア(人材育成、スキル、知識、生産性)など、事業の在り方自体の見直しが必要となる。