売上が70%程度であっても経営が成り立つ収支構造を目指す
業務効率化・組織改革・事業構造の見直しなどの改革に積極的に取り組んだホテルは損益分岐点が改善され、2021年以降の売上が、コロナ前の対2019年で70%程度(売上30%減)であってもGOPレベルでは同等の利益を確保することをめざすべきである。
勿論、地域差や施設規模や業態での差があることは承知している。
弊社のクライアントのフルサービスホテルの中には2020年度の売上が対2019年で30%程度(売上△70%減)のホテルが複数存在することも事実である。中には人件費総額が売上額とほぼ同等になり人件費率100%(雇用調整助成金を除く)というホテルも存在する。2019年までは営業黒字だったにもかかわらず、一気に奈落の底に突き落とされてしまった。
しかしこのホテルではいち早く、組織や役割または事業構造自体の転換に積極的に取組んだことで、損益分岐点が大きく改善され、売上規模が対2019年で60~70%程度でも赤字にならないことが見込まれている。そして2022年には更に黒字化が見込まれ、2020年の大きなマイナスを徐々に挽回するべく取り組んでいる。
リミテッドサービス(宿泊主体型)とフルサービス(総合型)ホテルの人件費の考え方
経費構造の見直しの場合、特に人件費の効果的な削減(適正化)は重要なポイントだが、需要回復期を見越した体制も視野に入れたい。
宿泊主体型ホテルはそもそも少人数のスタッフで運営しているため、人件費の削減にもおのずと限界がある。
一方、フルサービスホテルに関しては宴会スタッフやレストランスタッフまたは調理部門や管理部門などの業務を見直すことで、「総労働時間を削減」し結果として人件費のコントロールすることは十分に可能である。
とはいえ宴会調理部門などは残念ながら現時点では宴会需要が消滅したことにより、雇用調整助成金の対象として、集中的に休暇を取得させているホテルも多く、調理スタッフの技術とモチベーションの低下が危惧されるところである。
例外的ではあるが人手が不足している他の業種に期間限定で出向させるという、新たな雇用形態も出現してきた。
更にはニューノーマルに適合した新たな商品開発に取り組んだホテル企業などは、2022年以降に需要が回復した段階では、その新たな商品が売上の底上げ効果となり、利益に貢献するはずである。